スペイン・チョコレートの歴史
スペインとチョコレートの深い関係とは？
皆さん、チョコレートをヨーロッパに広めたのはスペインだと知っていますか。
スペインはホットチョコレートを飲む国でも有名ですが、それが何故なのかはチョコレートの歴史から読み解くことが出来ます。
1.チョコレートはメキシコが起源？
チョコレートの原材料カカオはアステカ神話の文化神、農耕神のケッツァルコアトルが人間にカカオの木を贈ったことが起源とされており、アステカ帝国ではとても重要な食べ物であったと同時に通貨の代わりとしても使用されていました。アステカ帝国の人々にはカカオにスパイスを混ぜた暗色で濃厚な泡立った冷たい飲み物を取る習慣があり、これを”Tchocolatl”と呼んでいました。
スペイン人がカカオと出会ったのは16世紀頃です。 1519年スペインのコンキスタドール、エルナン・コルテス（Hernán Cortés）がメキシコに上陸した際、アステカ帝国第9代君主であるマクテス2世がエルナン・コルテスをケッツァルコアトルの生まれ変わりと信じて歓迎し、Tchocolatlでもてなしました。 先コロンブス期にチョコレートは唐辛子で味付けされており、辛く苦かったので、このスペイン人コンキスタドールの好みに合いませんでした。この為、彼はスペイン本土から持ってきた砂糖やシナモンを入れ、かつ温かい飲み物にしようと考えました。 こうしてエルナン・コルテスはチョコレートを発見し、1520年には彼に同行していた修道士のヘロニモ・デ・アギラール（Gerónimo de Aguilar）が最初のカカオとレシピをスペインに持ち帰りました。
2.飲み物としてのチョコレートはスペインからヨーロッパ諸国に広まった！
17世紀初頭、スペインでは貴族を中心にチョコレートが飲み物として受け入れられ、徐々に大衆化していきました。1615年にフェリペ３世の娘でフランスのカルロス13世と結婚をしたマリア・アンナ（María Ana de Austria)と1660年にフェリペ4世の娘で同じくフランスの ルイ14世と結婚したマリア・テレーズ（María Teresa de Austria）がチョコレートに魅了されチョコレートを飲む道具とショコラティエを連れて輿入れしたといいます。こうしてチョコレートは、フランスやイタリアをはじめ、ヨーロッパ全土へと広まりました。
17世紀から20世紀までチョコレートはスペイン人にとっては温かい飲み物として捉えられていました。最初はバニラやシナモン、ビクシンを入れ風味付けをしたり、きび砂糖を入れ甘くして飲んでいました。この為20世紀初頭までチョコレートがお菓子の材料として使われることはありませんでした。19世紀までスペイン社会で人気を博したこの飲み物としてのチョコレートはスペインを訪れた観光客の注目を集めました。”チョコレートはスペイン人にとってイギリス人が紅茶を飲む様なものだ”と言われていました。この様にしてチョコレートはスペインのシンボルとなっていきました。
3.食べるチョコレートが主流に！
当時飲むチョコレートは炒ったカカオ豆を粉々に砕き、すり潰してから熱湯を注ぐ必要があり、一般市民には骨が折れるものでした。しかし19世紀前半、飲むチョコレートに革命が起こります。オランダ人のカスパルス・ヴァン・ホーテンがカカオ豆からココアバターと呼ばれる油分を取り除く技術を発明し、ココアパウダーが誕生します。また19世紀半ばにはイギリス人のジョセフ・フライがこの取り除かれたココアバターを有効活用しはじめました。カカオ豆をすり潰して砂糖とココアバターを加え、食べるチョコレートを発明したのです。これによりスペインでも19世紀には食べるチョコレートへの消費が高まりました。しかし他のヨーロッパ諸国が国際市場へのチョコレート販売に熱心であったのに対し、スペインでは家族経営のチョコレート店がひっそりと国内の需要に答えるのみでした。
また飲み物としてのチョコレートがスペイン人にとって過度な嗜好品となっていたため、他のヨーロッパ諸国と比較するとコーヒーは遅れてスペインに入ってきました。それでもスペイン内戦後はこの習慣は徐々にコーヒーを好んで飲む習慣へと移行していきました。
（参考）
Nestle（スペイン語） Alimentación historia del chocolate
Wikipedia（スペイン語） Historia del chocolate en España
GODIVA コラム チョコレートの文化と歴史